ラジウム / Radium 夜光
6時位置の文字盤表記は「SWISS」「SWISS MADE」等
1963年頃まで使用されていた夜光塗料(自発光)、ラジウムの半減期は約1600年と驚異的なラジウムの粉末に蛍光物質を混ぜる事で半永久的に自発光するはずでしたが、蛍光物質の劣化によって現在は発光しなくなっておりますが、ブラックライトを照射することで発光するものもあります。
健康被害により使われなくなった「ラジウム」ですが、ラジウムが放出する放射線は紙一枚で防げるα線なので、実際に時計の使用者への影響はないようですが、問題は当時ダイヤル製造工場で働いていた作業員達がラジウムを塗るときに筆先を舌で舐めて整えていたことで、ラジウムを直接体内に取り込む形となり、放射線中毒になったと言われています。
※1967年にはIAEA(国際原子力機関)から、ラジウムの使用を規制する指針が定められました。
トリチウム / Tritium 夜光
6時位置の文字盤表記は「SWISS」「σ T SWISS T σ」「T SWISS T」「T SWISS MADE T」「T SWISS – T < 25」「SWISS – T < 25」等
ラジウム(半減期1600年)の代替え用として1960年代から使用されているトリチウムは、弱いエネルギーで夜光塗料を自発光させますが、半減期は約12年と短く、現在は自発光しない物が多くなりました。トリチウムの確認方法はブラックライト(紫外線ライト)を当てる事で粒子を確認する事ができます。初期モデルほど反応する粒子は少なく、後期モデルほど反応する粒子が多く見受けられます。
気になる人体への影響ですが、ダイアル表記の「SWISS – T < 25」の意味は風防の外側で計測した放射能量が、25マイクロキュリー以下を表していますので、放射能量としては紙1枚で防げる程度と弱く、人体に影響を与える量では無い事を表していますのでご安心下さい。もちろん日本ロレックスでメンテナンスも受け付けている事でも安全性の裏付けになっているかと思います。
年代によって焼けと呼ばれる変色・夜光の光り方に違いがあるのは、蛍光塗料の材料の違いによるものだと思われます。
90年代のトリチウムはブラックライトを当てると全体に青っぽく光り中に粒子が確認できますが、ブラックライトを消すと発光しません。
トリチウム夜光の最終年のU番はブラックライトを当てると全体に緑色に光り、粒子も多数確認でき1分程で徐々に光らなくなりました。
今は反応している90年代のトリチウムの光り方も10年後にはどのように変化するのか楽しみです。
インデックス・針の変色の濃い物が市場では人気があり高値が付いています。
▼画像は16570のW番になります。
ブラックライトを当てると全体に青くぼやけて光り、インデックス・針の夜光に粒子が確認できます。ブラックライトを消すと発光しません。
▼ロレックスの夜光をブラック(UV)ライトを当てて比べてみると、年代によって発光の違いが見受けられました。
左:16570 W番 トリチウム夜光
中:16700 U8番 トリチウム夜光
右:16570 U9番 ルミノバ夜光
▼ブラックライトを消してから約30秒後の画像になります。
左:W番のトリチウム夜光はブラックライトを外すと反応しなくなり。
中:U番のトリチウム夜光は緑の発光が弱くなりました。
右:ルミノバ夜光は緑に発光。
▼ブラックライトを消してから約60秒後の画像になります。
中:U番のトリチウム夜光は約1分程でほとんど反応しなくなりました。
右:U番のルミノバ夜光は緑に発光。
ルミノバ / Luminoba 夜光
6時位置の文字盤表記は「SWISS」「SWISS MADE」
1998年頃から使われている夜光塗料(蓄光)、トリチウム夜光は約12年と自発光に期限がありましたが、ルミノバは光を取り込んで蓄えた光を使っているので、半永久的に使用できる素材になります。
U番には「SWISS – T < 25」」トリチウム表記のルミノバ夜光=通称「トリチノバ」、その後「SWISS MADE」に変更される僅かな期間に「SWISS」表記の「オリースイス」が存在します。
・放射性物質を含んでいない
・トリチウムの発光塗料と比較して明るさが約10倍
・太陽光や照明の光を取り込む蓄光塗料
・ブラックライトを当てると青色に発光
・蓄光は緑色
夜光表記は違ってもルミノバ夜光で光り方は同じです。
・左 16570 U9番「SWISS」表記
・中 16570 U8番「SWISS – T < 25」表記
・右 16570「SWISS MADE」表記
「SWISS – T < 25」ルミノバ夜光(トリチノバ)
U番(1998年)
「 SWISS 」ルミノバ夜光(オンリースイス)
U番(1998年)~A番(1999年)
「 SWISS MADE 」
A番(1999年)~
「SWISS – T < 25」ルミノバ夜光(トリチノバ)、「 SWISS 」ルミノバ夜光(オンリースイス)は製造期間の短い希少なダイアルになります。
クロマライト / Chromalight 夜光
6時位置の文字盤表記は「SWISS MADE」「SWISS ※ MADE」
2007年頃にミルガウス、オイスター パーペチュアル等のインデックに着色されているモデルから使われている夜光塗料(蓄光)になります。夜光時間がルミノバの約2倍の8時間、色はブルー(青)に発光しますが、ルミノバ・クロマライトともに時間と共に光量が弱くなります。
左:116400GV
右:214700
※ブラック(赤外線)ライトを当てるとどちらも濃い青に光りますが、ライトを消すとルミノバは緑、クロマライトは青に光ります。
左:116400GV ルミノバ(緑) & 3・6・9時のインデックスはクロマライト(青)
右:214270 クロマライト(青)
▼ルミノバ、クロマライトの発光の違いになります。
左:16570 ルミノバ(緑)
中:116400GV ルミノバ(緑) & 3・6・9時のインデックスにクロマライト(青)
右:214270 クロマライト(青)
2023年現在の現行品はクロマライトになります。
ルミノバに変更されるまでのトリチウム夜光は光らない物がほとんどですが、ブラック(紫外線)ライトを当てた時に年代によっても反応が違うのもポイントのひとつで、年代によっては変色したりヒビが入ったりと経年によって生み出される個体差がヴィンテージウォッチの拘りにもなっています。
残念ながらトリチウム夜光のモデルをロレックスにオーバーホールを依頼すると、劣化を理由にパーツ交換が必須条件となることが増えております。中でも針交換は夜光が変更されてしまうのは致命的です。ヴィンテージの良さが失われないよう今の状態を維持するには、日々の手入れやメンテナンス業者選びも考えなければいけませんね。
希少価値の高いトリチウム夜光のロレックスですが、後年モデルは現行品よりもお値打ちな価格帯で、状態の良い個体を探せるチャンスです。
●シリアルナンバー
●クラスプコード
●最終品番まとめ
●リファレンスナンバー
●保証書の種類&出荷国コード
●WARRANTYの秘密
●夜光の違い
●時計の手入れ
●時刻の合わせ方
●オイスターフレックス